ことばの骨片から見るUXデザイン

 

 

 はじめまして。株式会社アップガレージグループ ITソリューション事業部 UXデザイナーのハラです。

 

 今回のテーマは、「UXデザインと言語化の関係」について。会社に所属するデザイナーとしては駆け出しの新卒の目線から、考えたことをまとめてみました。

 

 

1.本質ってなんのこと?

 会社ではよく「本質を見る、本質を探る」という言葉を耳にします。「本質」とは、物事の根本的な性質・要素のことであり、表面上のものではありません。目の前にあるデータや意見を必ずしも鵜呑みにせず、その背景や要因をもとに課題解決に向かう姿勢が求められています。

 UXデザイナーで言えば、「これをこうしたい!」という目の前の課題を来たままに打ち返すのではなく、そこに至った経緯までを紐解いていき、根っこの部分にある課題をいかに解決するか=ユーザー体験を上げるか、が業務の目的になってきます。

 本質。ビジネスシーンにおいて、ぐっと重みのある一単語です。

 

2.UXデザイン業務と言語化のあれこれ

 デザイナーは依頼を受けてものづくりを行うことが多いです。その依頼は、大枠だけが決まっていて細かい部分はデザイナーに任せられる場合も、要素を細かく指定している場合もあります。

 どちらにも言えることは、「文字だけの依頼を読み解くのは難しい」ということです。同様に、デザイナーから依頼側へ確認の連絡をする場合も、文字だけでは情報量が少ないのです。

 とはいっても、文字面だけではわかりにくいですね。頭の中にあるイメージを言語化してもなかなか伝わりづらい経験は、きっと誰にでもあることだと思います。視覚化するために、以下の例で見ていきましょう。

 

<依頼例(仮)>

〇〇の販促のためにバナーを刷新したい。商品名のフォントは大きく太めで、背景には夕焼けの写真を使用したいです。

 

 上記の依頼において、詳細を詰めなければならない部分は数多くあります。大枠としては以下の2点で考えられるでしょう。

 

2-1. 言語化された課題から本質を探る

 UXデザイナー業務において、依頼元の要求および詳細を詰めていく過程で、全てを鵜呑みにしてものづくりを行うことは基本的にありません。

 言語化された依頼を受け取ったら、

  ・その背景には何があるか?

  ・この依頼に至った理由はなにか?

  ・本来の目的をこの作業で達せられるか?

 を考えていきます。

 背景を知る中で、言語化された課題の本質が別のところにある場合もありますし、言語化によって本来の意図がブレている場合もあります。

 

上記の例で言えば、

 ・バナーを刷新することでどんな効果をあげたいのか?

 ・購入者にどのように訴求したいのか?

 ・夕焼けの写真をセレクトした意図は?

などが挙げられるでしょう。

 例えば「商品コンセプトをベースに、〇〇のようなペルソナを設定し、背景画像は空間をイメージさせるようなもので、かつ複数の色のグラデーションが収まったバナー」が本来要求されているのであれば、夕焼けの写真以外を使用したバナーを提案しても良いわけです。 

 

2-2. 言語化が難しい、デザインの細部

 さて、実際に夕焼けの写真を使うことになったとします。ひとくちに夕焼けといっても、言葉が持つ重さや色合いは人によって異なるため、これを紐解いていく必要があります。簡単に色をイメージしただけでも、いろいろな解釈ができてしまうからです。

"夕焼け"の例

この場合は、言葉ではなくビジュアルを使用して確認する方が、よりスピーディーなやり取りが可能なように思います。勿論イメージが固まってからも、その他の掲載情報との兼ね合いを見ながらバランスを取っていきます。画像でなく他の要素ひとつ取っても、イメージや本来訴求したいこと・ビジュアル的な効果を考えて、何パターンか作成することも多いです。

 

2-3. 質問の仕方を工夫する

 入社後のデザイン研修で質問・インタビューの仕方を学びました。個人的に一番難しいのがインタビューの構造を考えることです。

 ・はい・いいえで終わる質問(=クローズドクエスチョン)をしないこと

 ・文脈に沿った質問をすること

この辺りは意識していても、つい誘導のような訊きかたをしてしまう時があります。

 実際にチームメンバーと研修にて、コンテクスチュアル・インクワイヤリー(ユーザーの行動を観察しつつ状況に応じてインタビューを行う調査方法)を行った際も、臨機応変な質問や流れに沿った気遣いが難しかったように思います。

 期日を気にしていたり、目の前だけに集中してしまっていたりすると、気を配れなくなる部分です。当たり前に俯瞰して物事を見ることができるように、日々の業務から気をつける必要があると感じます。

 

つまり必要なこと

 必要なことは、「こういう意図だろう」と推し量るのではなく、わかった気になるのでもなく、直接訊くことです。そうして得たことばの端々に、本来の目的である核のようなものが存在しているように思います。ともすると膨大な単語に散らばりがちなその揺らいではいけないものを、この記事のタイトルでは骨片と表現しています。

 

3.すこしの気遣いが体験をより良くする

3-1 体験のあり方について

 弊社のデザイナーは、作成したデザインをコーディングすることも多いです。基本的にはhtml/cssですが、Vueやphpなども触れる機会があります。知らない部分がたくさんある領域なので都度調べるのですが、頻繁にぶち当たるのが「既に理解を深めている人が書いたHow to記事がわかりづらい」という事象です。

 〇〇をここに読み込んでくるだけ!簡単ですね!

といった文言に何度頭を悩ませたかわかりません。初学者向けと謳っているサイトでも見られる問題です。「何を」「どこに」「どのようなコードで読み込ませるか」を知りたいというのが本来の目的であるはずなのです。あるものに対して理解をしていると、過程や必要なはずの情報までを覆い隠すかのように、熟語や横文字でひとくちに纏めてしまいがちなのが、言語化する際によく見られる傾向だと思います。

 個人的にはこういった問題を解決するのがUXデザインだと思っています。初見の人でもわかりやすく、操作しやすく、目的を達するための道筋が立っているものが私の理想です。

3-2 原点:プロセスを細分化すること

 大学2年生のとき、GUIの授業で作成した図が私らしさをとてもよく表している気がしています。あるプロセスを踏むものをUIを作成することで視覚化する課題で、発想を飛ばして野菜の切り方に行き着いたのが個人的にとても気に入っているものです。

"プロセス"を細分化し視覚化すること

 料理の手順であれば「1. 大根をいちょう切りにする」と一文で書いてあるものを、さらに詳しく区分して、野菜のカットという切り口で広げていった過程図です。今から見れば表現しきれていない部分があり、Illustratorにも不慣れな感じがしますが、「過程にあるものを細分化すること」は当時から好きな作業のひとつでした。スキップしてしまいがちな間にあるものを取り零さずに、要素をアウトプットに起こしていくことは、どのデザインを作るときにも必要なことだと考えています。

 

3-3 現在と、これから

 現在の業務でいえば、私は車業界に明るいわけでもなければ、車の免許すら持っていません。もちろん大前提として知識をつけていくことも必要ですが、一方で、車のことに詳しくない目線だからこそ、より”わかりやすさ”を意識したデザインを作成できるのではないかと思います。コアな方だけでなく、それまであまり深く関わってこなかった方にも間口を広げていけるようなデザインを目指して、精進していきます。

 

 

ここまでお読みくださりありがとうございました!


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